技術情報

Technical information

郷土を護るための技術

1.社会資本ストックの点検

我が国では、橋梁やトンネル等の道路構造物を数多く管理しています。その数は、2m以上の橋梁で約70万橋、トンネルが約1万本です。この膨大な道路構造物の老朽化に対して、どのように対処していくかが今大きな課題となっています。

こうしたなか、2012年12月2日に中央自動車道上り線の笹子トンネルで、天井板が落下し走行中の車両が巻き込まれる大事故が発生しました。この事故を踏まえて、全国で社会資本の利用者や第三者の被害の回避を目的とした緊急点検が実施されてきました。この点検では、これまでの日常点検や定期点検で把握されていなかった損傷等が数多く確認されています。また、地方公共団体管理の施設の中には、これまでに点検がなされておらず、劣化や損傷の状況を把握できていなかった施設があることも報告されています。

道路構造物の老朽化問題では、橋梁やトンネル等の重要構造物に注目が集まっていますが、今回様々な社会資本ストックの点検を実施した結果、これまであまり注目されていない箇所での劣化や損傷で、道路機能に深刻なダメージを与える可能性があることがわかってきました。これらの損傷は、設計時や施工時の工夫である程度回避できるものと思われますので、今後の設計・施行に生かせればと思い、損傷の原因と対策について紹介します。

(1)横断暗渠の損傷

横断暗渠は、路面や斜面からの雨水を道路を横断させ排水するもので、管渠やボックスカルバートがあります。このうち、盛土部に作られた管渠では、破断して段差が出来ているものが数多くあります。暗渠に段差ができた場合、次のような被害が予想されます。

① 段差部から盛土が管内に流出し、盛土内部に空洞が発生する。


写真- 1 横断管渠の段差

② 段差部から盛土が管内に流出し、盛土内部に空洞が発生する。


  • 図- 1 盛土内部の空洞

  • 図- 2 盛土の脆弱化

こうした段差は何故発生するのか、原因は次のように考えられます。

道路の盛土は、建設時に決められた密度まで締固められて作られています。しかし、入念に締固められた盛土でも、自重による圧縮と交通荷重による転圧効果で多少の沈下は発生します。盛土が沈下すれば、横断管渠は同じように沈下しますが、呑口や吐口が沈下しにくい構造となっている場合には、図-3のように管渠がたわみ、やがては破断したものと考えられます。


図- 3 段差の発生原因の概念図

盛土部の横断暗渠の場合、吐口側は擁壁を貫通して設置されることが多いと思います。擁壁は、支持力を確保するため強固な地盤に設置されるので沈下はほとんどありません。そのため、盛土部と擁壁の間には沈下差が生じるのです。

図-4は横断管渠を弾性床上の梁として応力計算を行った事例です。盛土地盤を離散型のバネにモデル化し、盛土が100mm沈下した場合に相当する等価な等分布荷重を作用させています。

  • 断面図
  • 骨組み図
  • 変位図
  • 曲げモーメント図
  • せん断力図
図- 4 横断管渠の応力計算例

変位図を見れば解るように、管渠の中央部がたわみ、管渠が擁壁で固定されている部分は沈下していません。曲げモーメント図およびせん断力図からは。擁壁で固定されている箇所で大きな断面力が発生していることが確認できます。この場所は、写真-1の損傷位置と一致します。

損傷を防ぐためには、どのような方策があるのでしょうか。図-4-2図-4と同じモデルで、管渠が擁壁で固定されている部分を回転出来るようにしたものです。擁壁と管渠の接合部が回転することで、最大モーメントは約1/3に、最大せん断力は約1/2.5に低減されます。

  • 断面図
  • 骨組み図
  • 変位図
  • 曲げモーメント図
  • せん断力図
図-4-2 擁壁と管渠の接合部が回転出来る場合

このモデルのように、擁壁との接合部が回転できる具体的な構造としては、擁壁の接合部で継手を設けて基礎コンクリートも縁切りを行い回転可能な構造とすることが考えられます。また、 管渠自体を柔構造とすることも高い効果が得られると思います。

今後新設される盛土部の管渠は、このような損傷で盛土全体が崩壊しないように、損傷対策が行われることを願っています。

(2) ボックスカルバートの損傷

道路下には、排水やアンダーパスを目的としたボックスカルバートが建設されています。こういったボックスカルバートの点検を行って気がついたことがあります。それは、ボックスカルバート頂版の鉄筋の腐食が顕著であることです。


  • 写真-2 頂版の鉄筋腐食1

  • 写真-3 頂版の鉄筋腐食2

腐食の原因を特定するため、頂版の鉄筋腐食が発生しているボックスカルバートの設置条件を整理してみました。その結果、土被りが比較的薄いボックスカルバートで鉄筋の腐食が多く発生していることが解ったのです。このことから、次のような仮説を立ててみました。

図-5のように、土被りが大きい場合には、盛土内で水が分散されるが、図-6のように盛土が小さい場合には、ボックスカルバートの土留壁または擁壁等で囲われ、浸透した雨水が頂版上に帯水しやすいと思われます。さらに、土被りが極端に薄い場合には、透水性が高い舗装の路盤材が直接頂版上に施工されているので、より帯水しやすい構造になると考えられます。


  • 図-5 土被りが大きい場合

  • 図-6 土被りが小さい場合

橋梁の場合には、比較的小規模な床板橋においても床版上には必ず防止層を設けるのですが、ボックスカルバートの場合には、防水層を設けることはまれです。そのため、橋梁に比べて頂版の腐食が進行しやすいと考えられます。今後は、ボックスカルバートの長寿命化を図るため、図-7に示す以下のような対策を施すことが望ましいと考えられます。

①頂版上面にテーパーを設けて帯水しにくい構造にする。
②頂版正面には防水層を設ける。
③両端部には排水を促進するドレーンを設ける。


図-7 頂版鉄筋腐食防止構造
2.道路巡回

国土交通省では、河川や道路の施設等を常時良好に保つために公物管理補助業務を発注しています。この業務には、河川巡視支援業務、ダム管理支援業務、公物管理補助業務(河川関係)、道路巡回支援業務、道路許認可審査・適正化指導業務、公物管理補助業務(道路関係)があります。このうちの道路巡回支援業務について、業務の概要と弊社の取り組み状況を述べます。

道路巡回支援業務には、通常巡回・異常時巡回・定期巡回の3つの巡回があります。このうち通常巡回は、平常時における巡回であり、原則としてパトロール車両から視認できる範囲の道路の状況や道路利用の状況を把握するものです。パトロールで目視点検する対象は、表-1に示すように多岐にわたります。そのため、パトロールでは路線の状況に熟知した土木技術者を配置しています。

表-1 通常巡回の点検箇所
対象物着目点
道路および道路の附属物 路面の状況(ポットホール、段差、亀裂、わだち掘れ、凸凹、陥没等)
落下物等(石、木材、動物の死骸等)
路面の汚れ(油・土砂等)、水溜まり
路面凍結、積雪、マンホール等の蓋のガタツキおよび水の溢れ等
排水施設 蓋の破損、グレーチングの変形、大量の水溜まり、側溝・集水桝からの溢れ、アスカーブ・側溝・集水桝の詰まり、排水施設の無い箇所への雨水集中等
構造物 橋梁、トンネル、擁壁等の状況
交通安全施設 防護柵の損傷・不備(未設置等)、各種標識等の異常、各種支柱(照明・信号・標識等)の異常抜落ち、照明灯の昼間点灯箇所・夜間不点灯箇所
情報板の変形・点灯状況・表示内容・区画線の消えている箇所
視線誘導標等の反射体の損傷・汚れ
街路樹及び植樹帯 大型車両の通行や信号および標識の視認に支障、周辺の建物および電線等の支障、落葉の交通への支障、倒木の可能性、害虫の発生、根の生育による舗装の隆起
交通の状況 工事等の保安施設は適切か、 工事車両による道路路面の汚損・交通処理
道路隣接地 隣接工事による危険性、 隣接地の施設や立竹木の影響
道路の占用の状況 違法な看板等の設置や長期駐車車両の有無
冠水や降積雪・凍結の状況 道路の冠水や積雪・凍結の状況、標識等の道路付属物等の着雪

写真-4は、この通常巡回に使用している道路パトロール車です。皆様が国道でよく見かけるのがこの車両です。このパトロール車には、点検のための計測器具の他、簡易な補修や障害物の除去等を行う資機材が搭載されており、パトロールで発見した損傷で、第三者被害が発生する恐れがあると判断された場合にはその場で応急処置も行います。

異常時巡回は、台風・集中豪雨・豪雪・地震その他道路交通に支障を与えるおそれのある状況が発生した際に臨機に実施する巡回です。パトロール車から視認により、危険が予測される箇所の点検および災害の状況等を確認します。


写真-4 道路巡回用パトロール車

定期巡回は、以下に示す構造物等を原則として年1回徒歩等により目視点検を行うものです。

① 橋梁(側道橋を含む)
② トンネル等
③ 壁及び防災施設等(法面、法枠、吹付法面、擁壁、護岸兼用擁壁、防災施設)
④ 函渠(車道地下道)
⑤ 函渠(歩道地下道)
⑥ 横断歩道橋等
⑦ 排水施設(管(函)渠、側溝、集水桝)
⑧ 道路附属物(防護柵、道路標識及び道路情報施設等)
⑨ 歩道(組立歩道を含む)

この定期巡回、一般にはあまり知られていないのですが、非常に優れたシステムなのです。特別な器材等は用いず、近接あるいは遠方から双眼鏡等によって目視点検し、構造物等に異常がないか確認して行きます。
弊社の実績では、1班2名編成で年間100~150kmの点検が可能で、異常が発見された構造物等は、損傷や緊急性の度合いに応じて判定し、その結果を道路管理者に報告します。道路管理者は、点検結果を基に損傷箇所の補修工事や異常箇所の詳細調査実施します。

この方法は、我々が毎年行っている健康診断と似ています。大まかな健康診断を行い、異常があれば精密検査を受ける。こう言った、早期発見早期治療で直轄国道は維持されています。写真-5は、横断管渠の損傷を補修したものです。定期巡回で横断管渠の損傷を発見し、早期補修で盛土の脆弱化や空洞の発生を未然に防ぐことができた事例です。このように、劣化が進む前にこまめに補修する「予防保全」が今後重要になると思われます。

【左】a)外観、【右】b)管内部の状況
写真-5 横断管渠補修例

直轄国道では、このような「予防保全」の下地が十分に整っていますが、地方公共団体が管理している道路の場合、まだ体制が十分ではありません。これは私の個人的な意見ですが、地方公共団体でも直轄国道のように定期巡回を実施することが望まれます。ただし、直轄国道のように1年に1回の頻度ではなく、3~5年に1回の頻度で十分と思われます。たとえば高知県の場合、県が管理する国道および県道は約2800kmです。これを3年に1回点検すれば、1班2名編成で9班あれば全管理延長の構造物を点検できると考えられます。また、最新の資機材等を活用すれば、さらに点検を効率化できると考えられます。その一例を次の章で紹介します。

3. 三次元画像測量システム

三次元画像測量システムとは、全方位カメラで取得した画像(映像)からGNSS(全地球測位システム)やIMU(慣性計測装置)のデータと複合的に後処理解析を行い、カメラ位置の三次元座標・姿勢を取得するシステムです。車両で走行するだけで、周辺の様々なデータを取得することが出来ます。
このシステムを使うことで、様々な業務の効率化や空間情報の有効活用が行えます。

(1)三次元画像測量システム

このシステムでは、360°の全方位の画像を取得することが出来ます。写真-7は、このシステムで撮影したものです。道路上の付属物(標識や照明)、法面や路面、跨線橋等の状況を色々な角度から見ることが出来るので、損傷や変状の状況を容易に把握することが出来ます。また、撮影した画像には位置情報が記録されているため、対象物の位置が容易に特定できます。

撮影は、時速40km/h程度の速度で行えるので、一般の通行車両への影響も小さく、1日当り300km程度の撮影が行えます。前述の定期巡回においてこのシステムを用いれば、付属物等の目視点検は大幅に省力化できます。


写真-6 三次元画像測量システム
  • 案内標識
  • 案内標識
  • 法面のアンカー
  • 舗装の状況
  • オーバーブリッジ
  • オーバーブリッジ
写真-7 三次元画像測量システムでの撮影例

(2)南海トラフ地震対策

私の住んでいる高知県では、現在南海トラフ地震対策が最重要課題となっています。
弊社では、高知大学の原忠教授ご指導の下、この三次元画像測量システムで南海トラフ地震に関する様々な問題に取り組んでいます。その一つが高知大学と共同で実施しているハザードマップ作りです。

高知大学は、常時微動観測で得られたデータを基に、より詳細な液状化や揺れやすさやのハザードマップを作成しています。このハザードマップに、家屋等の情報を盛り込み、倒壊シミュレーション等を行うのに、このシステムで得られたデータを活用することとしています。写真-8は、リヤカーでの撮影状況です。海辺の町などは、狭い路地が多く車での撮影が困難です。そのため、特注したリヤカーに撮影機材を乗せて自転車で牽引しながらの撮影を行っています。


写真-8 リヤカーによる撮影状況
おわりに

弊社では、社会資本ストックの維持管理や南海トラフ地震対策など、郷土を護る取り組みを積極的に行っていきたいと思っています。これこそが、我々土木技術者に課せられた使命だと思います。

Copyright © Loyal-Consultant Co.,Ltd.
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